そのままであること
日々の喧騒を逃れ穏やかな時と場を求めて、人々は里を訪れる。
何も変える必要のない「当たり前」が営まれているから、そこに身をゆだねることに安心を得るのだろう。
里は温かく優しい場所なのである。
里が人間と自然とが合流するところに成り立つのだとすれば、
オホーツクの自然は人の意を凌駕する領域を今なお持ち続けている。
オホーツクの里はもっと鮮烈な場所かもしれない。
真冬の鈍色の空は光を隠し色をなくす。吹きすさぶ風と舞い上がる雪は生きるもの動きを止めさせる。
用意した全ての当たり前を受容れたことに満足した自然は、オホーツクの里に春をもたらす。
キラキラと木漏れ日を映す水面、
一斉に咲き誇る花々、
木々を飛び交いさえずる小鳥たち、
森にあそぶひぐまの親子。
オホーツクの里にあるのは人々の都合ではない当たり前。Naturalであること、
人間業ではないこととそれに関わることのもたらす至福である。
文責/長南 進一
写真提供:黒澤徹也
表紙写真:木彫り作業中の黒澤さん(興部町)
オホーツクの人々
オホーツクに暮らす人々。その活動と想いをお伝えします。
Reccomend
本誌でご紹介した3名のテロワールな人が、
オホーツクで感じた原体験を元に手掛けているもの、活動につながっている原風景をご紹介
興部
静かな森がみせる自然の営みの息づかい
日本海との分水嶺である北見山地を源にし、海岸まで僅か40〜50kmの間には多くの川や湖沼や湿地が地勢を作り「西紋」地域の多様なテロワールを生んでいる。鬱岳の麓を流れるオタッペ(於達辺)川。森の木漏れ日を映すキラキラと美しい水面の下にはヤマメやイワナが棲み、それを狙ってカワセミが来る。川面に飛び込むカワセミの音が静かな森を一瞬緊張させる。
オタッペ川
西興部
丹精こめてつくりあげた革細工をあなたに
本誌に登場される伊吾田良子さんの「自分で獲った鹿革は活用したい」との強い思いが生み出した地域の特産品です。伊吾田夫妻は自分たちでも狩猟をし、原材料の調達から製品が出来上がるまでのすべての工程を村内で完結しているのです。全てハンドメイドで行うタンニンなめしの作業は1枚をなめすのに1ヶ月の期間を要するほどです。ぜひ一度手にとって本物の革の良さを体感してみてください。きっと毎日持ち歩きたい大切な一品になること間違いなしです。
Nishiokoppe Deer Leather
西興部ディアレザーの取り組みについてはこちら
https://www.vill.nishiokoppe.lg.jp/Villager/Ryouku/cfirgc0000002ia3.html
紋別
みんなの庭をみんなでつくろう
2015年にグランドオープンした「美はらしの丘ローズガーデン」。「紋別にはどうして花の名所がないのか」という運営団体・NPO法人ロサ・ルゴサ理事長の岸山さん(P3)の思いから発足した私設バラ園。150種以上、約600本のバラが季節ごとに美しい花を咲かせ、夏場は毎日開園しています。
美はらしの丘ローズガーデン
住所:紋別市大山町4丁目バイパス駐車場下
開園期間:春〜秋
料金:無料
連絡先:090-5221-6416
information オホーツク観光情報
編集部より
約1年半振りになるHARUの3号目を発行することができました。今回も発行にあたって、多くの方にご支援・ご協力をいただきました。ありがとうございました。「オホーツク・ツーリズムマガジン」としてどんな情報を発信できるか考えた時、オホーツクに住む理由や現在の活動に繋がる原体験や原風景にスポットを当てることにしました。当たり前にオホーツクにあるもの。だけどそれは誰かのエピソードを通して知ることで、どこにもない特別なものに見えてくるのではないかと考えています。誰かにとっては特別で、でもそれは誰もが持っていること。そんなことが共有できるだけで地域の魅力は限りないことに気づきます。地域に根ざした人を通して地域を知ることは旅をきっと豊かにする。HARUが「本物のオホーツクに出会う旅」のきっかけになると嬉しいです。
※HARU(ハル)は、アイヌ語で「自然からいただく食の恵み」を意味しています。
HARU vol.03
2021年3月発行
発行 一般社団法人オホーツク・テロワール HARU編集部
発行人 古谷一夫・長南進一
編集長 中西拓郎(ドット道東・1988)
デザイン 鈴木美里
編集 大黒朱梨
取材 瀧澤信行(株式会社北海民友新聞社)・遠藤友宇子・長南進一
写真 中西拓郎
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